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クレーマーを生み出す環境とは

臨床心理学やカウンセリングの分野では、精神が正常性か異常性を判断する基準の一つに「適応(adjustment)」というものを使います。

この「適応」とは、人間が生活したり、活動したりする「環境(対人関係や家庭、学校、職場、様々な社会・物理的な環境)」に適応しているかどうかということをいいます。

適応状態とは


「環境に適応した」状態とは、環境に対して適切かつ有効な行動・反応ができる状態のことです。

適応した状態にある人は、感情や気分が安定して、自己効力感や自己肯定感を持っている傾向があります。そして、周囲から好意的に評価されているという自己意識も持っています。

自己効力感とは、自分が持っている目標を実現されるための能力が、自分にはあるという感覚のことです。また、自己肯定感とは、自分の存在には意味があり、評価される価値があるなど、自分自身を肯定的にとらえる感覚です。

このように、環境に適応した人は、その環境から、肯定的なフィードバックをもらえるので、心理状態が安定しやすいということでしょう。

そういう意味でも、人は「自分が居心地のいい、評価されやすい環境(居場所やアイデンティティ)」を持った方がいいといえます。

不適応状態とは


反対に、環境に適応できない状態を「不適応(maladjustment)」といいます。このときには、環境に対して不適切で無効な行動・反応しかできない状態です。

不適応状態にあると、人は感情や気分が不安定になり、無力感や自己不全感を持ちます。

環境に適応している人は、周囲からの評価も高いので、自分の目標を実現しやすいですが、不適応になっている人は、周囲から低い評価を受けるため、自分の目標を実現することは難しいです。

そのため、慢性的な欲求不満になります。

不適応状態にあるお客様


悪質なクレームや迷惑行為をされるお客様の多くは、この「不適応」状態にあると仮定することができるでしょう。

お客様が自己不完全感、無力感を持っているのであれば、どんなに理性的に説得したとしても、解決するのは難しいでしょう。

「お客様の要求を満たすことが難しい」ということを理性的に説明しても、不適応な状態にあるお客様は、きっと「ネガティブな評価を受けた」と感じて、感情が不安定になるだけでしょう。

ダブル・ロールで対応する


そこで、カウンセリングの分野で使われている「ダブル・ロール」という考え方で対応するといいでしょう。

難しいクレーマーへの対応を「カウンセリング」ととらえ、カウンセリング技法を応用するのです。

ダブル・ロールとは、「寛容さ(優しさ)」と「厳格さ(厳しさ)」という2つの役割をカウンセラーが果たすということです。

不適応状態にある人の不安定な心理を、受け入れ、寛容に対応する一方、厳格に、正しい方向へと誘導するという2つの作業を行うということです。

クレーム対応の場面では、最初はお客様の話をよく聴き、それを受け入れ、少しずつ正しい方向に誘導、修正していくということです。

これを実際に身につけるためには、かなり多くの経験や勉強が必要になります。